直接工事費とは、工事の施工に直接必要となる費用です。公共土木工事の積算では、材料費・労務費・直接経費の3つに分けて計算します。

ただし、直接工事費だけを集計しても、工事全体の採算は分かりません。現場の管理費や会社を運営する費用も含めて、見積金額を考える必要があります。

この記事では、費用の区分、計算例、計上漏れを防ぐ確認方法を、工事会社の実務に沿って紹介します。

直接工事費とは?工事費全体の中での位置づけ

直接工事費は、例えば配管材を購入する費用や、配管を施工する職人の作業にかかる費用です。「施工するために、何がどれだけ必要か」を積み上げる部分と考えると分かりやすいでしょう。

国土交通省の「土木工事工事費積算要領及び基準」は、材料費・労務費・直接経費を工種などの区分ごとに積算する考え方を示しています。2026年4月1日適用の改定版をもとに、以下では公共土木工事の基本的な区分を整理します。

出典:国土交通省「土木工事工事費積算要領及び基準」(令和8年2月27日改定)

区分

計算の関係

直接工事費

材料費+労務費+直接経費

純工事費

直接工事費+共通仮設費

工事原価

純工事費+現場管理費

工事価格

工事原価+一般管理費等

請負工事費

工事価格+消費税等相当額

この構成は、国土交通省直轄の公共土木工事の積算を説明するものです。民間工事の見積書や自社の原価管理表で、同じ名称・区分がそのまま使われるとは限りません。

直接工事費の内訳は材料費・労務費・直接経費

まず3つの区分を押さえ、数量・単価・算定条件を確認します。内訳を残しておけば、仕様や作業日数が変わったときに見積もりを修正しやすくなります。

内訳

内容の例

確認すること

材料費

配管材、電線、鉄筋、塗料など、施工に必要な材料

規格、使用量、端材や施工中の損失、現場までの運賃の扱い

労務費

施工に必要な職人の作業にかかる費用

職種、人数、作業日数・時間、作業条件

直接経費

施工に必要な機械の使用、水・電力の使用、特許工法の使用などにかかる費用

使用期間、単価に含まれる範囲、他の費目との重複

材料費:図面上の数量だけで終わらせない

材料費は、必要な数量に単価を掛けて求めます。例えば配管材なら、必要な長さに加え、切断で生じる端材や搬入条件も確認しましょう。

「材料単価に運賃を含めたうえで、同じ運賃を別途加える」といった重複にも注意が必要です。

労務費:人数と作業時間の根拠を残す

労務費は、必要な作業量と賃金の条件から見積もります。「職人2人で3日」のように、人数と期間を具体化すると、実績との差を確認できます。

必要な作業量を考える際には、過去の類似工事や歩掛も参考になります。歩掛とは、一定量の施工に必要な労務・材料・機械などの量を示すもので、国土交通省も施工実態調査に基づく標準歩掛を公表しています。

出典:国土交通省「土木工事標準歩掛」

直接経費:現場で発生する経費をすべて入れるわけではない

「現場で使った費用だから直接経費」と決めると、共通仮設費や現場管理費と混同します。例えば、施工用の機械と現場事務所では、費用の目的が異なります。

費用の名称だけでなく、何のために使うかを確認することが大切です。公共工事では発注者の積算基準、民間工事では見積条件と自社の管理ルールに沿って整理しましょう。

間接工事費・一般管理費との違い

公共土木工事の積算では、間接工事費は共通仮設費と現場管理費で構成されます。一般管理費等は、これらとは別の区分です。

費用

主に支えるもの

例

直接工事費

各工種の施工

施工用材料、職人の作業、施工用機械

共通仮設費

工事全体に共通する施工環境

現場事務所の設置、共通する安全施設など

現場管理費

現場を運営・管理する活動

現場管理担当者の給与、現場事務所の通信費など

一般管理費等

会社の継続運営と付加利益

本店・支店の管理部門の費用など

建築工事では、国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」が共通仮設費・現場管理費・一般管理費等の算定を扱っています。土木と建築の基準や率を混ぜて使わないようにしてください。

出典:国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」(令和8年改定)

現場管理費を詳しく整理したい方は、現場管理費の内訳と計算方法を解説した記事も参考にしてください。

直接工事費の計算方法と具体例

基本は、材料費・労務費・直接経費をそれぞれ計算し、合計する方法です。次の例は計算手順を示すための架空の条件で、相場や公共工事の設計単価を示すものではありません。金額は税抜でそろえています。

費目

数量と単価の例

金額

材料費

配管材100m×1,000円/m

100,000円

労務費

2人×3日×20,000円/人日

120,000円

直接経費

施工用機械3日×10,000円/日

30,000円

直接工事費の合計

100,000円+120,000円+30,000円

250,000円

ここでの20,000円は計算用の仮定です。実際には職種・地域・契約・作業条件などを確認し、適切な単価を使います。

また、250,000円はこの例の直接工事費だけです。共通仮設費や現場管理費、会社の管理費や利益を考慮せず、そのまま請負金額にするのは避けましょう。

見積書では数量・単位・単価を示す

「一式」で記載する場合も、社内では計算の根拠を残します。発注者向けの表示と、社内で採算を判断するための内訳を対応させておくと、変更時の説明がしやすくなります。

関連:工事見積書の諸経費の内訳・書き方

外注費・法定福利費で間違えやすいポイント

外注費を使う原価管理表と、積算の3要素は分けて考える

自社の原価管理では、材料費・労務費・外注費・経費のように、外注費を独立した項目で管理することがあります。公共土木工事の積算上の3要素と、自社の集計科目は、目的の異なる区分です。

例えば、材料と施工をまとめて協力会社に依頼した場合、外注見積に材料費が含まれていれば、同じ材料費を自社の見積もりにもう一度足すと二重計上になります。

公共工事設計労務単価に諸経費が含まれると考えない

国土交通省は、公共工事設計労務単価には、法定福利費の事業主負担分などの現場管理費や、一般管理費等の諸経費が含まれていないと説明しています。

設計労務単価を使った金額だけで、雇用に必要な費用をすべて賄えるとは限りません。見積もりでは、必要な費用を別途確認し、漏れと重複の両方を防ぎましょう。

出典:国土交通省「公共事業労務費調査・公共工事設計労務単価について」

原価の集計科目を整理する際は、工事原価の構成要素を解説した記事も参考にしてください。

一人親方が自分で施工する場合も、採算管理では自分の作業時間に見合う費用を見込みます。社内の採算計算と、税務上の経費計上は区別してください。

見積もりと実績を比べ、工事中に原価を確認する

直接工事費は、受注前に計算して終わりではありません。見積もり時の数量・単価と、実際の使用量・作業量を同じ区分で比べると、どこで費用が増えたのかを確認できます。

差が出る項目

確認すること

次に取る行動の例

材料費が増えた

単価上昇、使用量、端材、追加施工の有無

仕入条件を確認し、変更分を分けて記録する

労務費が増えた

予定と実際の人数・時間、待機や手直し

作業条件と工程を見直し、次回の見積根拠に残す

機械使用の費用が増えた

使用日数、返却日、追加手配

工程と機械の手配を照合する

例えば、材料が20,000円増え、作業が2人で1日延びて40,000円増えた場合、先ほどの直接工事費は310,000円になります。差額60,000円の原因を分けて残すことが、次の見積もりの改善につながります。

追加・変更工事は、当初工事と分けて記録しましょう。費用の増加が施工の遅れによるものか、依頼された追加作業によるものかが分からなければ、採算の判断も難しくなります。

まず表計算で管理するなら、原価管理表の使い方を解説した記事も活用できます。更新担当者と入力時期を決め、請求書や日報が届くたびに現場ごとの費用を確認しましょう。

直接工事費を整理し、現場ごとの利益を把握しよう

直接工事費を正しく見積もるには、内訳・数量・単価・施工範囲をそろえることが基本です。さらに間接工事費や会社の管理費も確認し、工事全体で採算が合うかを判断します。

「材料の請求書は事務所、作業時間は現場の日報、見積書は社長のパソコン」と情報が分かれていると、費用の確認に手間がかかります。まずは案件ごとに情報を集め、同じ費目で集計できる運用を整えましょう。

クラフトバンクオフィスは、専門工事会社向けの経営管理システムです。日報・案件・見積などの情報を一元管理し、労務費・材料費・経費などを原価として集計して、現場ごとの原価と利益の把握を支援します。

費用区分の決め方や、日々の入力・集計をどう続けるかに悩んでいる方は、自社の業務に合う管理方法から相談してみてください。対面での説明会や電話・チャットによるサポートも提供しています。

【対面サポート有】工事原価の管理と現場ごとの利益の見える化を、クラフトバンクに無料で相談してみる