工事見積書を作成するとき、「諸経費を何%に設定すればいいのかわからない」「諸経費にはどこまで含めていいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

建設工事では、材料費や職人の労務費だけでなく、現場までの交通費や通信費、保険料、事務所の家賃など、工事を進めるためにさまざまな費用が発生します。

こうした費用を適切に見積もらず、毎回なんとなく「工事費の○%」として計上していると、実際にかかった原価を回収できず、工事を受注しているのに利益が残らない原因にもなります。

そのため、諸経費は単なる見積書上の項目ではなく、工事会社が適正な利益を確保するために重要な費用です。

本記事では、工事見積書における諸経費の意味や主な内訳、相場、計算方法・書き方から、諸経費を適切に管理して利益を残す方法までわかりやすく解説します。

「工事は受注できているのに利益が残らない...」「案件ごとの原価や利益を正確に把握できていない...」

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工事見積書の諸経費とは

工事見積書における諸経費とは、材料費や直接的な施工費とは別に、工事を進めたり会社を運営したりするために必要となる費用です。

現場までの交通費や車両のガソリン代、現場事務所の費用、通信費、保険料、本社の事務所家賃などが該当します。

材料や施工そのものに直接かかる費用ではないため見えにくいものの、工事を完成させるためには欠かせない費用です。

諸経費を十分に見積金額へ反映できていない場合、工事自体では利益が出ているように見えても、最終的に会社に利益が残らない可能性があります。

諸経費と工事費の違い

工事費は、建物や設備などを実際に施工するために必要となる費用です。

代表的なものとして、材料費、職人の労務費、外注費、施工に使用する機械・設備などの費用があります

一方、諸経費は工事を直接施工するための費用ではないものの、現場や会社を運営するために必要となる費用です。

以下のように整理できます。

区分

主な費用

工事費

材料費、労務費、外注費、施工機械費など

諸経費

現場管理費、交通費、通信費、保険料、事務所家賃など

ただし、どの費用を工事費・諸経費として扱うかは、工事の種類や会社の見積方法によって異なる場合があります。

重要なのは名称そのものではなく、工事に必要な費用を漏れなく把握し、見積金額へ反映することです。

諸経費が必要な理由

諸経費は、工事の品質や安全を確保しながら会社を継続的に運営するために必要な費用です。

現場では、施工そのもの以外にも、現場監督による管理、車両での移動、電話やインターネットによる連絡、安全管理、保険への加入などさまざまな業務が発生します。

さらに会社を運営するためには、事務所の家賃や水道光熱費、事務員の人件費、会計・営業活動などにも費用がかかります。

これらを見積金額に含めず会社側ですべて負担すれば、受注するほど利益が圧迫される可能性があります。

「材料費+職人の人件費」だけで見積金額を決めるのではなく、工事を完成させ会社を維持するために必要なコストまで考えて価格を設定することが重要です。

工事見積書における諸経費の主な内訳

工事見積書の諸経費にはさまざまな費用が含まれます。

一般的には、現場管理費や一般管理費などに分けて考えると整理しやすくなります。また、公共工事などでは共通仮設費・現場管理費・一般管理費等といった区分が用いられます。

ここでは、工事に関連する代表的な費用を4つに分けて解説します。

現場経費(現場管理費)

現場経費とは、工事現場を管理・運営するために必要となる費用です。

具体的には以下のような費用があります。

工事そのものに使用する材料ではありませんが、現場を安全かつ円滑に運営するためには必要な費用です。

特に工期が長い現場や遠方の現場では、人件費や交通費、車両費などが増えるため、現場経費も大きくなる傾向があります。

一般管理費

一般管理費とは、特定の工事現場ではなく、会社そのものを運営するために必要となる費用です。

具体的には以下のような費用があります。

現場が動いているかどうかにかかわらず発生する費用も多いため、各工事の売上から一定額を回収しなければ会社全体として利益を確保できません。

そのため、工事ごとの採算を見る際には、直接的な工事原価だけでなく一般管理費まで含めて考えることが重要です。

共通仮設費

共通仮設費とは、工事を行うために一時的に設置・使用する設備などにかかる費用のうち、複数の工種に共通して必要となるものです。

具体的には以下のような費用があります。

これらは建物そのものを構成するものではありませんが、工事を進めるためには必要です。

工事規模が大きい場合や工期が長い場合には、仮設設備の設置・維持にも相応の費用がかかるため、見積時点で適切に計上する必要があります。

法定福利費

法定福利費とは、従業員が加入する社会保険について会社が負担する費用です。

主に以下の保険料の事業主負担分が該当します。

建設業では、技能労働者の社会保険加入を進め、必要な法定福利費を確保するため、法定福利費を内訳として明示した見積書の活用が進められています。

そのため、単純に「諸経費」の中へまとめるのではなく、自社の見積書や取引条件に応じて法定福利費を区分して記載することが重要です。

工事見積書の諸経費の相場は何パーセント?

工事見積書を作成するときに悩みやすいのが、「諸経費を何%に設定するか」です。

一般的な目安として工事費の5〜10%程度とされることがありますが、すべての工事にこの割合を適用すればよいわけではありません。

工事の規模や期間、現場の場所、自社のコスト構造などによって適正な諸経費は変わります。

諸経費は工事費の5〜10%程度が目安

民間工事などの見積書では、諸経費を工事費の5〜10%程度として計算するケースがあります。

仮に工事費が500万円の場合、諸経費率を8%とすると、500万円 × 8% = 40万円となり、工事費と諸経費を合わせた金額は540万円です。

ただし、5〜10%という数字はあくまで一つの目安です。

工事によって必要な経費は異なるため、「他社も10%だから自社も10%」と一律に決めるのではなく、自社の実際のコストを確認して設定する必要があります。

工事規模や工事内容によって諸経費率が変わる

諸経費率は工事規模や内容によって変わります。

同じ500万円の工事を受注したとしても、自社から10分の現場と片道2時間かかる現場では、交通費や移動にかかる人件費が大きく変わります。

特に工事金額だけを基準として諸経費率を決めていると、手間のかかる小規模工事などで必要な経費を回収できない場合があり、注意が必要です。

工事金額だけではなく、「その現場を完成させるために何が必要なのか」を確認して諸経費を設定しましょう。

諸経費が高すぎる・安すぎる場合の注意点

諸経費は高すぎても安すぎても問題があります。

相場と比較して極端に高い場合、発注者から「何にこれだけの費用がかかるのか」と疑問を持たれ、値下げ交渉につながる可能性があります。

反対に、受注を優先して諸経費を必要以上に安くすると、売上は確保できても会社に利益が残らない可能性があります。

たとえば、見積時に諸経費を30万円としていたものの、実際には交通費や現場管理費などで50万円かかっていれば、20万円分利益を圧迫します。

重要なのは、諸経費を単純に高く・安くすることではありません。

実際に発生するコストを把握し、発注者にも説明できる根拠のある金額を設定することが重要です。

工事見積書の諸経費の計算方法と書き方

諸経費の計算方法には、大きく「一定の諸経費率を掛ける方法」と「必要な費用を積み上げる方法」があります

また、見積書では諸経費を一式で記載する方法と、内訳を記載する方法があります。

自社の工事内容や発注者から求められる見積形式に応じて使い分けましょう。

工事費に諸経費率を掛けて計算する方法

比較的簡単なのが、工事費に一定の諸経費率を掛ける方法です。

計算式は以下の通りです。

諸経費 = 工事費 × 諸経費率

工事費が300万円、諸経費率が8%の場合、300万円 × 8% = 24万円となります。

見積作成が簡単で、案件ごとの計算方法を統一しやすいのがメリットです。

一方、実際の経費と関係なく一律の割合を使用すると、現場によっては必要な経費を回収できない可能性があります。

そのため、過去の工事実績などから自社の適正な諸経費率を把握したうえで使用することが重要です。

必要な経費を積み上げて計算する方法

もう一つは、工事で発生すると予想される費用を一つずつ積み上げる方法です。

交通費

50,000円

駐車場代

30,000円

通信費

10,000円

現場管理費

150,000円

保険料

20,000円

の場合、合計26万円を必要経費として計算します。

工事ごとの実態に合わせて計算できるため、一定率を掛ける方法よりも正確な見積を作りやすいのが特徴です。

一方で、必要な項目の洗い出しや計算に時間がかかるため、過去案件のデータや見積テンプレートなどを活用すると効率的です。

見積書に「諸経費 一式」と記載する方法

諸経費は、見積書上で、

諸経費 一式 ○○円

のようにまとめて記載することもあります。

項目数を減らせるため、見積書を簡潔に作成できるのがメリットです。

一方、金額が大きくなると発注者から「諸経費とは何の費用なのか」と質問される可能性があります。

一式で記載する場合でも、社内では何にいくらかかるのかを把握し、質問された際に説明できる状態にしておくことが重要です。

諸経費の内訳を記載する方法

発注者に費用の根拠を明確に伝えたい場合は、諸経費の内訳を記載する方法があります。

項目

金額

現場管理費

150,000円

交通・車両費

50,000円

保険料

20,000円

その他経費

30,000円

合計

250,000円

上記のように記載します。

内訳を明示することで、発注者が「何にお金がかかっているのか」を理解しやすくなり、価格に対する納得感を得やすくなります。

特に法定福利費については、社会保険料の事業主負担分を適切に確保する観点から、見積書への内訳明示が推進されています。

工事見積書の諸経費を設定する際の注意点

諸経費を適切に設定するには、「相場が○%だから」という理由だけで金額を決めないことが重要です。

実際の原価と見積金額にズレがあれば、その分だけ会社の利益が減少します。

ここでは、特に注意したい3つのポイントを解説します。

1.根拠なく一律の諸経費率を設定しない

「うちの会社は昔から諸経費10%」というように、すべての工事へ同じ割合を適用している会社もあります。

しかし、工事によって必要となる経費は異なります。

特に、

では、通常より諸経費が増える可能性があります。

過去の工事実績から「工事金額に対して実際に何%程度の経費が発生しているか」を確認し、自社に合った基準を作ることが重要です。

2.法定福利費など区分して記載すべき費用に注意する

諸経費の中には、まとめて「一式」とするのではなく、区分して管理・記載することが重要な費用があります。

代表的なのが法定福利費です。

建設業では社会保険加入に必要な費用を適切に確保するため、法定福利費を内訳明示した見積書の活用が推進されています。

そのため、「諸経費10%の中に全部含めているから問題ない」と考えるのではなく、発注者や元請会社から指定されている見積形式などを確認したうえで適切に記載しましょう。

3.実際の原価と見積金額を定期的に比較する

諸経費を適正化するうえで重要なのが、見積時の金額と実際に発生した原価を比較することです。

たとえば見積時には、

工事費500万円+諸経費40万円

としていたとしても、工事完了後に確認すると実際の諸経費が60万円かかっている場合があります。

この状態を把握せず次の工事でも同じ8%を設定すれば、同様に利益を圧迫する可能性があります。

工事が終わったら、

見積 → 実行予算 → 実際の原価 → 粗利益

まで確認し、差が発生した原因を分析しましょう。

こうした振り返りを繰り返すことで、自社にとって適正な諸経費率が見えてきます。

工事見積書・諸経費の管理を効率化する方法

諸経費を適切に設定するためには、見積書を作成するだけでなく、工事ごとの原価と利益を継続的に管理する必要があります。

特に複数の工事が同時に進む会社では、「見積はいくらだったか」「実際にいくら使ったか」「最終的に利益はいくら残ったか」を案件ごとに把握することが重要です。

そこで活用できるのが、建設業向け工事管理システムのクラフトバンクオフィスです。

クラフトバンクオフィスでは、案件ごとの売上や原価、粗利などの情報を一元管理できます。見積時の数字だけではなく、工事の進捗に合わせて原価と利益を把握することで、「売上は立っているのに利益が残っていない」といった状況を早期に把握しやすくなります。

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Excel・スプレッドシートで管理する

工事件数が少ない場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートでも諸経費を管理できます。

案件ごとに、見積金額や工事原価、諸経費や売上、粗利益や粗利率などの項目を用意し、見積と実績を比較します。

導入コストが低く、自社に合わせて自由に項目を設定できるのがメリットです。

一方、案件数が増えるほどファイルやシートが増え、「どの数字が最新かわからない」「担当者しか内容がわからない」といった問題も起こりやすくなります。

さらに現場担当者が入力した情報を事務担当者が別のExcelへ転記している場合、二重入力や入力ミスが発生する可能性もあります

Excelで十分に管理できている間は問題ありませんが、工事件数や担当者が増えてきた段階で管理方法を見直すことも重要です。

見積・原価管理システムを活用する

案件数が増え、Excelでの管理が難しくなってきた場合は、見積・原価管理システムを活用する方法があります。

工事管理システムを利用すれば、見積、受注、原価、請求などの情報を案件単位でまとめて管理しやすくなります。

特に重要なのが、工事ごとの利益を確認できる状態を作ることです。

工事会社では売上だけを確認すると、「今月は1,000万円売り上げたから順調」と判断してしまう場合があります。

しかし、材料費や外注費、現場経費などで950万円かかっていれば、実際に残る粗利益は50万円です。

クラフトバンクオフィスでは、現場ごとの原価と利益を可視化し、工事に関する情報をクラウド上で一元管理できます。

見積を作って終わりではなく、工事中の原価を確認しながら利益を管理することで、赤字工事の早期発見や見積精度の改善につなげられます。

「工事はたくさんあるのに、なぜかお金が残らない」という状態から抜け出すためにも、売上だけではなく原価・粗利まで管理できる仕組みを整えることが重要です。

過去案件から適正な諸経費率を把握する

諸経費を適正化するには、過去案件の実績を蓄積することが重要です。

たとえば過去10件の工事について、

工事

工事金額

実際の諸経費

諸経費率

A工事

300万円

24万円

8%

B工事

500万円

55万円

11%

C工事

1,000万円

70万円

7%

といったデータを残しておけば、自社の工事で実際にどの程度の諸経費が発生しているのかが見えてきます。

さらに「小規模工事では諸経費率が高くなりやすい」「遠方の現場では交通費が増える」といった傾向も把握できます。

このデータを次回の見積作成に活用すれば、経験や勘だけで諸経費を決めるのではなく、過去の実績を根拠に価格を設定できます。

見積を作る → 原価を管理する → 利益を確認する → 次の見積へ反映する

というサイクルを繰り返すことで、見積精度は徐々に高まります。

クラフトバンクオフィスなどの工事管理システムを活用して案件情報を蓄積しておけば、こうした振り返りもしやすくなります。

まとめ

工事見積書の諸経費とは、材料費や直接的な施工費とは別に、工事現場や会社を運営するために必要となる費用です。

現場管理費や一般管理費、共通仮設費、法定福利費などさまざまな費用があり、一般的には工事費の5〜10%程度が一つの目安とされることがあります。

ただし、適正な諸経費は工事規模や工期、現場の場所、会社のコスト構造によって異なります。

そのため、「毎回10%」などと根拠なく設定するのではなく、実際に発生した原価を確認しながら自社に適した金額を設定することが重要です。

特に注意したいのが、受注できていることと、利益が残っていることは別だという点です。

売上が増えていても、見積時に想定していなかった諸経費が積み重なれば、会社の利益は減ってしまいます。

クラフトバンクオフィスを活用すれば、案件ごとの原価や利益を一元管理し、工事の採算を把握しやすくなります。

見積・原価・利益のデータを蓄積し、その結果を次の見積へ反映することで、適正な諸経費を設定しながら利益が残る経営を目指しましょう。

「工事は受注できているのに利益が残らない」「案件ごとの原価を正確に把握できていない」とお悩みの方は、ぜひクラフトバンクへご相談ください。

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