躯体工事とは?RC造での作業内容を解説
躯体工事は、建物の基本構造を造る工事です。そのため、正確・確実な作業が求められます。同時に、建築工事全体の大部分を占めるものでもあるため、その方法によっては、全体の工期の進捗にも大きく関わってきます。
ここでは、作業面でも管理面でも重要な躯体工事について紹介します。
躯体工事は建物の構造を形作る一連の工事
ですから、躯体工事といっても、特定の職種や作業を指す言葉ではありません。そもそも、躯体はいくつもの種類の工事が、それぞれの作業を順序良く進めることで出来上がっていくものです。RC造の場合には、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート打設工事が躯体工事の範囲に含まれます。
躯体工事は構造物としての建物の品質に直接関わるもので、欠陥があれば取り壊して建て直すという事態にも発展する重要な工程です。そうでなくても、コンクリートに締め固め不足のあるようなクオリティだと、経年による劣化がひどくなったり、地震や豪雨などの災害時に思わぬダメージを受けたりしてしまいます。それだけに、確実な施工が不可欠なプロセスでもあります。
建物は、その規模の大小を問わず、必ず工期があります。もちろん、悪天候や何らかのトラブルで予定どおりに進まないこともありますので、それを見越したスケジュールを組み、その中で工事を進めていかなくてはなりません。
工事の着工から竣工までは、下記のようにいくつかの段階に切り分けることができます。
・地盤改良や杭打ちなどを含めた「基礎工事」
・基礎の上に構造物を造り上げる「躯体工事」
・躯体に必要な設備を設置し、内外装を整えていく「設備・仕上げ工事」
・建物周辺の舗装や外塀・門柱の設置、造園・植栽などを行う「外構工事」
このうち、躯体工事は一般的に最も工期が長いため、スケジュール管理が不十分だと全体の工期の遅れにつながりかねません。
反対に、躯体工事が効率良く管理されていれば、工期に余裕を持って作業を進めることができます。躯体工事は工事全体のスケジュール管理という面からも重要なのです。
躯体工事という言葉は、RC造だけでなく木造住宅の建築工事でも使われます。木造の場合、躯体となるのは基礎や柱と柱のあいだに斜めに入れる筋交い、床版、小屋組、屋根版などの工事が含まれます。
木造建築では一戸建て住宅が多く、RC造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で建てるマンションやオフィスビルと比較すると、工期は短くなります。しかし、躯体が出来上がらないことにはその先の工事ができませんので、工程管理はしっかり行わなくてはなりません。
むしろ、工期が短い分、何らかのトラブルがあると日程の調整が難しいという面があります。
RC造での躯体工事
鉄筋工事は、躯体の骨格を造る工事です。鉄筋は、コンクリートとともに躯体の強度を長期間にわたって維持するための、大切なものです。JIS規格によって規格が定められている鉄筋を使い、それを現場で加工したり切断したりして骨組みを組み上げていきます。どこにどのような鉄筋を組みつけるかは、施工図や配筋詳細図などの図面に記載されており、それに合わせて工事を進めます。
ただし、場所によっては入り組んだ配筋が必要な場合もあり、工事前に手順を検討しておく必要があります。また、鉄筋を特定の角度で曲げたり、円形に加工したりという作業は現場でも対応できますが、複雑な加工が必要な場合には、鉄筋会社に依頼することもあります。
鉄筋が組み上がった後に、コンクリートを流し込むための型枠を作るのが型枠工事です。型枠は、まさに躯体の型となるものですから、ずれやゆがみがあってはなりません。また、型枠の継ぎ目に段差があると、仕上がりにも凹凸ができてしまいます。そのため、正確な作業が必要とされるのです。
型枠工事は、まず図面からどのような型枠が必要なのかを拾い出し、それに合わせてあらかじめ加工しておいたものを現場に納入します。細かい部分や図面どおりに収まらないところは現場で型枠を調整し、組み上がった鉄筋を囲むように型枠を組み立てていきます。生コンクリートを流し込む際には、かなりの圧力がかかりますので、組み立てた型枠が崩れたり生コンクリートが漏れたりしないよう、型枠用チェーンなどでしっかり固定しておきます。
コンクリート打ち放しで仕上げる場合には、左官工による細かな凹凸の修正ができませんから、よりいっそうの精度が求められるところです。
コンクリート打設工事は、プラントからミキサー車で運ばれてきた生コンクリートを、ポンプ車で圧送して型枠の中に流し込む工事です。ただ流し込むだけではコンクリートの中に気泡ができてしまうため、バイブレーターと呼ばれる機材で振動を与え、型枠の隅々まで生コンクリートが行き渡るようにします。
しかし、天候や気温、コンクリートの材料配合、打設方法と打設後の養生など、コンクリート打設工事には注意すべきポイントが多々あるのです。
これらの要素を軽視してしまうと、コンクリートに十分な強度が出ないばかりか、場合によってはハンマーでちょっとたたいただけでボロボロと崩れてしまうような結果になってしまいます。
特に、冬場の冷え込みが厳しい時期はコンクリートに含まれる水分が凍結してしまい、強度不足になってしまう場合もありますので注意が必要です。
躯体工事の工期を短縮するには?
そのため、建築現場では規模の大小を問わず、躯体工事の工期を短くするためのさまざまな工夫がなされているのです。特に、工期の長い大規模な工事では、そうした工夫が大きな効果を発揮します。ここでは、RC造で使われる手法について紹介しましょう。
大規模な建築プロジェクトでは、コンクリート型枠の転用が行われることがあります。全体をいくつかの工区に分け、規格化・ユニット化されたシステム型枠を転用しながら、型枠工事とコンクリート打設工事を行っていきます。
型枠製作の作業負荷が減り、型枠組み立ての作業も平準化することで作業効率がアップし、躯体工事の短期化につながります。
プレキャスト工法とは、あらかじめ工場で製作されたプレキャストコンクリート(PCa)の柱や梁を、現場で組み立てる方法です。現場の天候に左右されずに安定した品質の建築資材を確保でき、コンクリート打設や養生の時間が短縮できます。
作業そのものの省力化も図れる上に、型枠材の使用量を大幅に減らすことができますので、森林資源の保護にもつながります。
特定支柱を使い、早く後工程に入る方法もあります。型枠に打設したコンクリートはゆっくりと固まっていき、28日後に設計強度に達するとされています。本来なら、十分な強度が出るまで待って上層階を造るのですが、打設後4日ほどで型枠を解体し、スラブ(床)面を複数の特定支柱(クイックサポート)で支えることで、上層階の型枠工事とコンクリート打設が可能になります。
特定支柱を活用すれば、より早く後工程に入ることができるだけでなく、型枠材の量を大幅に減らすこともでき、工期全体の短縮にも貢献します。
進化し続ける躯体工事
また、躯体工事は構造体そのものを造る作業であり、品質の確保は大前提。欠陥があれば取り壊しにもつながってしまうため、確実な施工が求められる工事といえるでしょう。