建設業に携わる労働者の安全を確保し、企業としての責任を全うするためには、特別教育が不可欠です。本記事では、建設業における特別教育について、以下の観点から詳しく解説します。
- 特別教育の概要や必要性
- 特別教育に関する労働者・事業者のメリット
- 建設業で必要な特別教育一覧
- 特別教育の実施方法
安全かつ生産性の高い職場環境を構築するために、特別教育の重要性を理解し、適切な実施方法を学んでいきましょう。
「特別教育を実施したいけど、誰にどう依頼をすればいいかわからない...」
そんな建設業のお悩みをクラフトバンクが解決します。経営改善・業務効率化・DX推進・採用強化、その他お困り事なんでもお気軽にご相談ください。
特別教育とは

特別教育とは、労働安全衛生法で定められた安全衛生教育の一種です。危険または有害な業務に従事する労働者の労働災害や健康被害を防止するために、事業者が実施します。
例えば、建設業ではクレーン運転や高所作業車運転、アーク溶接など、多くの業務が特別教育の対象です。特別教育を通じて、事業者自身も安全管理の意識を高めることが求められています。
特別教育は実施だけでなく、受講履歴や教育記録の管理も重要です。クラフトバンクオフィスでは、安全教育を含めた労務・現場情報の一元管理方法を資料で紹介しています。
【一覧表】建設業で必要な特別教育の種類と対象作業

建設業でよく行う作業のうち、特別教育が必要なものを一覧表にまとめました。機械の大きさや作業の高さによっては、特別教育ではなく技能講習や免許が必要になるため、右の列であわせて確認してください。
分類 | 特別教育の名称 | 対象となる主な作業 | これを超えると必要な資格 |
|---|---|---|---|
高所作業 | 足場の組立て等 | 足場の組立て・解体・変更の作業 | 高さ5m以上の足場は作業主任者(技能講習)の選任が必要 |
高所作業 | フルハーネス型墜落制止用器具 | 高さ2m以上で作業床を設けるのが難しい場所で、フルハーネス型を使う作業 | ― |
高所作業 | ロープ高所作業 | 高さ2m以上で、ロープで身体を保持して行う法面・外壁などの作業 | ― |
高所作業 | 高所作業車の運転 | 作業床の高さが10m未満の高所作業車の運転 | 10m以上は技能講習 |
建設機械 | 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用) | 機体重量3t未満のバックホウ・ブルドーザーなどの運転 | 3t以上は技能講習 |
建設機械 | 小型車両系建設機械(基礎工事用) | 機体重量3t未満のくい打機・アースドリルなどの運転 | 3t以上は技能講習 |
建設機械 | ローラー(締固め用機械)の運転 | ロードローラーなどの運転 | ― |
建設機械 | ボーリングマシンの運転 | 地質調査などのボーリングマシンの運転 | ― |
揚重 | クレーンの運転 | つり上げ荷重5t未満のクレーンの運転 | 5t以上は免許 |
揚重 | 移動式クレーンの運転 | つり上げ荷重1t未満の移動式クレーンの運転 | 1t以上5t未満は技能講習、5t以上は免許 |
揚重 | 玉掛け | つり上げ荷重1t未満のクレーン等の玉掛け | 1t以上は技能講習 |
揚重 | 建設用リフトの運転 | 建設現場で荷物だけを運ぶ建設用リフトの運転 | ― |
揚重 | ゴンドラの操作 | 外壁工事・清掃などでのゴンドラの操作 | ― |
揚重 | 巻上げ機(ウインチ)の運転 | 動力による巻上げ機の運転 | ― |
荷役 | フォークリフトの運転 | 最大荷重1t未満のフォークリフトの運転 | 1t以上は技能講習 |
電気・溶接 | 低圧電気取扱 | 低圧(交流600V以下)の充電電路の敷設・修理、開閉器の操作 | ― |
電気・溶接 | 高圧・特別高圧電気取扱 | 高圧・特別高圧の充電電路の敷設・修理、開閉器の操作 | ― |
電気・溶接 | アーク溶接等 | アーク溶接機を使う金属の溶接・溶断 | ― |
電気・溶接 | 自由研削用といしの取替え等 | ディスクグラインダーなどのといしの取替え・試運転 | ― |
有害作業 | 酸素欠乏危険作業(第1種・第2種) | マンホール・ピット・汚水槽などでの作業 | 現場には作業主任者(技能講習)の選任が必要 |
有害作業 | 石綿取扱い作業 | 石綿を含む建築物・工作物の解体・改修 | 現場には作業主任者(技能講習)の選任が必要 |
有害作業 | 粉じん作業 | 岩石・コンクリートの切断やはつりなど、粉じんが出る作業 | ― |
教育の時間数は「安全衛生特別教育規程」で科目ごとに定められています(例:足場の組立て等は学科6時間、フルハーネス型墜落制止用器具は学科4.5時間+実技1.5時間)。
特別教育を受けさせずに対象の業務を行わせると、労働安全衛生法第59条第3項違反となり、事業者に6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。新しい現場に入る前に、作業員ごとに必要な特別教育を修了しているか、この表で確認しましょう。
建設業における特別教育の必要性

建設業は他の業種に比べて労働災害の発生率が高く、特に死亡事故の割合が突出しています。特別教育は、業務従事中に発生するさまざまな危険を防止するために不可欠です。
労働者に危険作業の知識や安全対策の技能を習得させることで、安全意識を高める効果があります。特別教育の実施は、自身と周囲の安全を守るための重要な取り組みと言えるでしょう。
特別教育を受講する労働者側のメリット

特別教育を受講すると、労働者は自身の安全と健康を守るための知識と技能を身につけられます。ここでは、特別教育を受講する労働者側のメリットを以下の視点から解説します。
- 安全に業務を遂行するための知識と技能を習得できる
- 就業制限業務に従事できるようになる
労働者側のメリットを把握しておくことは、事業者として特別教育の重要性を理解するきっかけになるでしょう。
安全に業務を遂行するための知識と技能を習得できる
特別教育は、業務に潜む危険性や安全な作業手順、保護具の正しい使用方法などを学ぶ機会になります。労働安全衛生法第59条3項において、事業者は労働者が安全かつ健康に業務を遂行できるよう、必要な知識と技能を習得させる義務があるとされています。
特別教育を受けることで、労働者は法律で定められた安全基準を理解し、安全な作業方法を身につけられ、結果として労働者自身の安全を守ることにつながるのです。
就業制限業務に従事できるようになる
労働安全衛生法第61条では就業制限が設けられており、一定の危険有害業務には、特別な資格を持たない労働者を就業させることが禁止されています。
特別教育を受講し修了することで、就業制限業務に従事することが可能になります。つまり特別教育は、労働者にとってキャリアアップの道を開き、より多くの業務に携わるチャンスをもたらすと言えるでしょう。
特別教育を取り入れる事業者側のメリット

特別教育は労働者だけでなく、事業者側にも以下のメリットをもたらします。
- 労働災害の発生を抑制できる
- 企業の社会的責任を果たせる
- 生産性の向上につながる
ここで紹介するメリットを踏まえ、改めて特別教育の重要性を理解しましょう。
労働災害の発生を抑制できる
特別教育を導入することで、労働災害の発生を抑制できます。労働者が危険な作業に関する正しい知識と安全な手順を身につけられ、安全意識が向上するためです。
例えば高所作業や重機の操作では、適切な教育を受けることで事故のリスクを大幅に軽減できます。結果として、人的損失の軽減や企業の信頼性向上につながります。
企業の社会的責任を果たせる
特別教育の実施は、企業が社会的責任を果たすうえで不可欠です。なぜなら、労働者の安全と健康を守ることは企業の基本的な義務であり、法律でも求められているためです。
労働安全衛生法に基づいて適切な教育を行うことで、法的義務を遵守し、社会からの信頼を得られるでしょう。企業イメージの向上や、ステークホルダーからの支持を得ることにもつながるでしょう。
生産性の向上につながる
特別教育を実施することで、労働者が安全かつ効率的に作業を行えるようになるため、生産性の向上も期待できます。安全な作業手順を習得することで、無駄な動きを減らし作業効率を高められます。
労働災害の減少と合わせた、企業全体の生産性向上につながるのが特別教育のメリットです。
特別教育と技能講習・免許との違い

特別教育と混在しやすい技能講習・免許との違いは、資格の有無や義務の対象などが挙げられます。
特別教育
特別教育は、事業者が労働者に対して行う安全衛生教育です。危険や有害な業務に従事させる際に必要とされますが、資格取得ではありません。
特別教育自体は社内で実施可能です。修了証の発行義務はありませんが、教育記録を3年間保存する必要があります。
労働者の安全意識を高め、労働災害を防ぐための基本的な教育と言えるでしょう。
技能講習
技能講習は、都道府県労働局長の登録を受けた機関が実施する講習で、修了すると資格を取得できます。特に危険度の高い業務や、作業主任者として労働者を指揮管理するために必要です。
修了者には「技能講習修了証明書」が交付され、法律で定められた資格を有することになります。より専門的な知識と技能を身につけるための教育と言えるでしょう。
免許
免許は、国家試験に合格して取得する国家資格です。技能講習や特別教育よりも高度な専門知識と技能が求められます。
例えば、ボイラー技士やクレーン・デリック運転士などが該当します。免許を取得すると、法律で規定された業務を行うことが可能になり、同種の特別教育や技能講習の業務を実施することも可能です。
特別教育の実施方法

特別教育の実施方法は、自社で行うか外部機関に委託する場合の2つがあります。それぞれの方法にはメリットがあり、企業の状況やニーズに応じて選択することが重要です。
適切な実施方法を選ぶことで、労働者の安全意識を高め、労働災害の防止につなげられるでしょう。
自社で実施する場合
自社で特別教育を実施する場合、教育内容を自社の業務に合わせてカスタマイズできます。自社の現場で直面する、具体的な危険や課題を取り入れられるためです。
例えば、特定の機械操作や現場特有の安全対策を詳しく教えることが可能です。結果、労働者が実務に直結した知識を身につけられ、安全な作業が期待できます。
また、教育のスケジュールを柔軟に調整できる点も、自社で実施するメリットです。
社内で教育を行うときに使える資料は、「安全教育の無料資料」で紹介しています。
外部機関に委託する場合
特別教育を外部機関に委託する場合、専門的な知識と経験を持つ講師から質の高い教育を受けられます。なぜなら、外部機関は最新の法令や業界の動向を踏まえた教育プログラムを提供しているためです。
労働安全衛生協会や建設業労働災害防止協会などの機関では、標準化された教材と設備が整っています。労働者は高度な知識を習得し、企業としても教育の手間を省けるでしょう。
さらに、自社で講師や教材を用意する必要がないため、効率的に教育を実施できます。
特別教育に関するよくある質問

ここでは、特別教育に関するよくある質問に回答をしています。
特別教育の有効期限は?
特別教育には法律上の有効期限は設けられていません。一度受講すれば、その後も該当する業務に従事できます。
しかし、労働安全衛生法第60条の2では、機械設備の変更や技術の進歩に伴い、定期的な安全衛生教育の実施が求められています。法的な期限はないものの、安全性向上のために再教育は欠かせません。
したがって、企業としては定期的な再教育を行うことが望ましいでしょう。
特別教育の記録はどうすれば良い?
特別教育を実施した場合、受講者や教育内容を明確にするために一定の記録を作成し保存する義務があります。具体的な記録項目は、以下のとおりです。
- 受講者の氏名
- 受講年月日
- 教育内容(科目など)
- 講師名
また、保存した記録に関しては3年間保存しなければなりません。記録を適切に管理することは、法令遵守と安全管理の両面でメリットがあります。
特別教育は資格ですか?
特別教育は、国家資格のような試験に合格して得る資格ではありません。法律で定められた科目と時間の教育を修了することで、その業務に就けるようになるという位置づけです。外部機関で受講すると修了証が発行されるため、現場では修了証の写しを資格の証明として提出するのが一般的です。
丸のこや脚立の作業に特別教育は必要ですか?
丸のこや脚立の作業は、労働安全衛生法の特別教育の対象ではありません。ただし丸のこについては、厚生労働省の通達により「丸のこ等取扱い作業従事者に対する安全教育」の実施が求められており、現場によっては修了証の提出を求められます。
まとめ
建設業における特別教育は、労働者の安全を確保し、企業の社会的責任を果たすうえで欠かせないものです。特別教育を適切に実施することで、労働災害の防止や生産性の向上など、多くのメリットが期待できます。
現場に入る前に元請へ提出する「工事安全衛生計画書」では、作業員が持つ資格や特別教育を記入する欄があります。
実施方法は、自社内での実施や外部機関への委託など、状況に応じて柔軟に選択可能です。労働者の安全と企業の成長のために、特別教育の導入や見直しを検討してみましょう。